2021年2月18日

建築家展2021|三上建築事務所


1 里山の子供たちのいえ

日立市立はなやま認定こども園/茨城県日立市/2019年

里山の子供たちのいえ

敷地は彼方の海に向かって緩やかに傾斜する山坂の中腹にある。周囲はかつての振興住宅地である。山並みに抱かれた子どもたちの里山の家をつくろうと考えた。新園舎は東南の園庭(既存園舎部分)を囲むL型に配置することとした。西側に0歳から2歳児の保育室と玄関・事務室、北側に3歳から5歳の保育室と遊戯室を配置した。保育室1室ごとに屋根を設けて、里山の集落のような佇まいとした。西側の小さな子どもたちの家は方形の屋根、大きな子どもたちの家は南北方向の棟をもつ切妻として、全体をつなぐ下屋を設けた。下屋は保育室前にはそれぞれ1間の幅をもつ廊下と濡れ縁が通り、その先には出の大きな軒下空間を設けた。かつての農家のように子どもたちは通園の際も園庭で遊ぶ時も濡れ縁から出入りする。木造でありながら耐震要素をRC造として分散して配置した。それによって、園庭に面する下屋部分に筋交いや壁面をなくし、里山の民家のような佇まいを創った。


2 砂沼の先の筑波山

下妻市立下妻中学校/茨城県下妻市/2018年

砂沼の先の筑波山

この学校には地域の中心というありふれた言葉がよく似合う。下妻市域の中心部の学校として、市内の中核を担う多くの人たちの母校でもある。そして、下妻市を特徴づける砂沼が隣接し、その先には紫峰筑波の二つの峰が望める。校舎は3層に納めて直線状に配置した。校舎延長は100m超に及ぶ。1層目は1.8m間隔で並ぶ細い柱が仮想境界面を構成する下屋とし、3層目は3つに分節したコンクリートのマッスが突出する。2層部分を抉り取ることで、正門・砂沼・筑波山が一線状に並ぶことを強調する軸線を創り出した。前面道路に面する校舎西側の妻側に昇降口を設け、前面に折板状の大きな屋根が架かる。生徒たちを毎朝迎え入れるためであると同時に、既存の体育館と一体化する装置でもある。しかし、今は未だこの大屋根は体育館の陰に隠れている。その真価は将来この体育館が無くなったときに現れる。


益子 一彦/株式会社三上建築事務所

■profile 
1959 茨城県生まれ
1983  武蔵工業大学工学部建築学科卒
1983  三上建築事務所入所
2001  三上建築事務所副所長
2005 三上建築事務所所長

■work
1998 下館市立図書館
2000 大洗町立南中学校
2004 結城市民情報センター
2006 潮来市立図書館
2007 稲敷市立桜川中学校
2009 東京理科大学大子研修センター
2010 茨城町立明光中学校
2011 生活協同組合 パルシステム茨城・みとセンター/筑西市立協和中学校
2012 大洗町幕末と明治の博物館・聖像殿/茨城県立水海道第一高等学校
2013 農後高田市立図書館/水戸市消防本部北消防署/堀川保育園
2014 茨城県立水戸第二高等学校普通・特別教室棟/石岡第一高校 管理・普通教室棟
2015 筑波技術大学春日地区/東西医学総合医療センター
2016 茨城県立常陸太田特別支援学校小中学部棟/矢祭町立矢祭小学校/水戸市医師会 水戸看護学院
2017 玉野市図書館/安城市図書情報館 アンフォーレ/学びの杜ののいちカレード
2018 下妻市立下妻中学校/武蔵野市立吉祥寺図書館
2019 鉾田市立鉾田南小学校/パルシステム栃木センター
2020 リブリオ行橋(行橋市図書館等複合施設)/砺波市立砺波図書館

■book 
1999 図書館・建築・開架・書架 -ライブラリーアイデンティティを求めて-
2011 図書館空間のデザイン
2018 続・図書館空間のデザイン