建築家展’24|横須賀 満夫

横須賀 満夫

横須賀 満夫
株式会社横須賀満夫建築設計事務所 取締役会長
APEC Architect


ものを”創る”ことへのこだわりは誰にでもある自然な心です。その心の表現を仕事としている建築家は、純粋であるべきですし、美しいもの・温かいもの・明るいものなど、それらを素直に読み取れる感性を養うべきだと思います。クライアントの考えを感性というフィルターを通して、どのような考え方で創りあげていくかが、建築家に与えられた大きなファクターであろうと思います。


水戸女子高等学校

水戸女子高等学校

所在  水戸市上水戸
竣工日 平成24年12月28日
構造  RC造 一部S部  
規模  地上3階 塔屋1階
延床面積 5,991.33㎡

東日本大震災では、本校においても、校舎が全壊し、仮設校舎での生活を余儀なくされました。
そのような中で、学校づくりの過程や新しい校舎が、復興に向けた一筋の光となって、生徒や先生方の原動力になればと考えました。
学校の中心には、3層吹抜けのコミュニティストリートを配置し、これに沿って教室やアリーナが配置されたコンパクトな計画です。
各階毎に、交流・展示・学習など、趣きに変化を持たせたしつらえによって、多様な学校生活をサポートするとともに、学校としての一体化を創出しています。
また、このコミュニティストリートはエコボイドとしての機能を備え、トップライトによって、光と風を導くとともに、毎日の生活の中で自然を感じられる健康的な場所となりました。
他にも『地中熱利用換気システム』や『自然換気システム』、県産材の木材を多用することで、明るく健康的な教育環境を創出しました。
校舎のデザインは、活動がまちに表出され、景観形成に寄与できる様な、透明感のある佇まいを目指しました。

透明感のあるデザインにより校内の活動がまちに表出する

光が降り注ぐコミュニティストリート

多様な交流を促すコミュニティラウンジ

オープンな図書室と連携した学習スペース

ICT環境による学習スペース

特別教室と連携したラーニングスペース


少友幼稚園

少友幼稚園


所在  水戸市備前町 
竣工日 平成24年8月9日
構造  W造 
規模  地上2階
延床面積 402.11㎡

大正時代から100年余り続く、歴史ある幼稚園の建て替えです。
大正時代に創設されてから、昭和の水戸大空襲で被災し、当時の園舎が建て替えられましたが、東日本大震災によって再度被災し、建て替えへと至りました。
本幼稚園は会堂兼ホールの機能も持ち、古くからまちに開かれ、地域のランドマークとして親しまれていました。
計画するにあたり、初期園舎の切妻屋根の面影を残し、新しいデザインとして昇華することにより、地域のランドマークを復興することを考えました。
住宅地導入部としての佇まいにも配慮し、低層木造建築としました。
外壁はレンガ造であった旧園舎の色合いを、木と塗装により、表現しました。
また、レンガやステンドグラス等の歴史物を仕上材として再利用し、新たな命を吹き込みました。
100年余り続く本幼稚園の歴史を、次の100年へと接続するデザインにより、これからも地域の中で親しまれる施設としました。

地域のランドマークを復興した新園舎

初期園舎の面影を残し、レンガの色合いを木と塗装で表現

約100年前のレンガ造の初期園舎

機能性と歴史性が表出した切妻屋根の連なり

レンガの再利用

裏通りを優しく灯すデザイン

ステンドグラスの再利用

木構造表し効果で心地よい音に包まれた親しみある遊戯室(会堂兼ホール)


水戸市民会館

水戸市民会館

 (伊東豊雄建築設計事務所・横須賀満夫建築設計事務所 共同企業体)

所在  水戸市泉町
竣工日 令和5年3月22日
構造  RC造 一部S造、W造   
規模  地下2階 地上4階 23,232.35㎡

東日本大震災で被災した旧市民会館を建替えた新たな施設として、12年ぶりに市民の活動の場が復活しました。
江戸時代から目抜き通りの栄えた国道50号の商店街の一角に敷地を移し、衰退しつつある中心市街地に、かつての賑わいを再びつくり出すことを考えました。
2000席の大ホールを始め、多機能が備わった地上4階地下2階の複合文化施設です。
南側に国道を挟んで京成百貨店、北側に磯崎新さん設計の水戸芸術館が隣接し、市民会館がこれらをつなぎ、街の一部となるよう計画しました。
市民会館はあらゆる世代の人たちが日常的に気軽に楽しむことのできる施設を目指しました。
この施設最大の特徴は耐火集成材を柱と梁としてやぐら状に組み上げた「やぐら広場」です。
建物を南北に貫く通路の一部になっており、コンサートや展示会、マーケットなどが行われ、その中を来館者は自由に歩き回ることができます。
城下町として栄えたコンテクストを活かし、大規模な耐火集成材による木組みによって建物を包み、広場をつくることを試みました。

城下町の歴史的建物と呼応する力強さと活動や賑わいがファサード越しに感じられるデザイン

やぐら広場

まちと繋がるエントランス広場

ラウンジギャラリー

3階ミーティングラウンジ

4階ホワイエ

大ホール


横須賀 満夫

横須賀 満夫
株式会社横須賀満夫建築設計事務所 取締役会長
APEC Architect

profile

1938 茨城県常陸太田市生まれ
1962 日本大学理工学部建築学科卒業
1963 ㈱吉田建築事務所(新宿)
1965 ㈱ヤカタ建築事務所(銀座)
1969 横須賀満夫建築設計事務所 所長
1986 ㈱横須賀満夫建築設計事務所 代表取締役
2020 ㈱横須賀満夫建築設計事務所 取締役会長

works

2008 行方市立玉造中学校
   県営西十三奉行アパート
2009 ひたちなか市立那珂湊第二小学校
   筑波大学留学センター講義棟
2010 石岡市やさと中央保育所
   常陸太田市立峰山中学校
2011 セキショウ水戸オフィス
   糸魚川市保健づくりセンター「はぴねす」 
2012 学校法人 少友幼稚園
   学校法人 水戸女子高等学校
2013 取手競輪場メインスタンド
   茨城新聞社様オフィス移転
2014 土浦市立土浦小学校
   鹿嶋ハートクリニック病棟
2015 県立下館第二高等学校
   常陸太田市立金砂郷中学校
2017 つくば市立秀峰筑波義務教育学校
2018 株式会社アダストリア本店
2020 JAF 一般社団法人 日本自動車連盟茨城支部
2023 水戸市民会館
(伊東豊雄建築設計事務所・横須賀満夫建築設計事務所 共同企業体)

books

1965 建築パース入門
1997 ボローニャのポルティコに学ぶ
1997 インドにコルビュジェ・ルイスカーンを訪ねて)
1998 現代建築の巨匠達のルーツを訪ねて
2007 地域遺産はがき(ユネスコ協会)