建築家展’24|益子 一彦

益子 一彦

株式会社 三上建築事務所
Kazuhiko Mashiko/MIKAMI Architects


【品格主義 DEGNITISM】
綿密な計画   Meticulous planning 
誇りある行動  Acting with pride
完然たる成果  Perfect outcomes 
毅然とした建築 Resolute Architecture


これは私たちの活動の方針である。紆余曲折の思考を経て、行き着いた答えである。日本人であることの特質を再認識し、正統な設計事務所を基盤としながら、世界で認知される建築を提供するための私たちの姿勢である。
建築主のニーズへの的確な応答は私たちの原初的な役割であり、正統な設計事務所としての所作を果たすこと基盤とする。しかし、私たちが自身の役割をそこに留めることは、建築主の望むところではない。私たちの熱意が込められた建築を求められている。
建築は単なる建物ではなく、物語と美意識を具備するものである。しかし、物語や美学は偶然によって付与されるのではない。建築を志向する意思が建築を創るのだ。期待を超えて建築主に所有する満足をも提供し、社会公共の福祉の向上にも寄与する建築の提供、すなわち建築に到達せしめることが私たちの使命である。そこに私たちの独自性が付与されるから私たちの存在理由がある。使命感が私たちの誇りであり、同時に私たちの存在証明でもある。


江南市布袋駅東複合公共施設

江南市布袋駅東複合公共施設

所 在 地 愛知県江南市北山町
竣工年月 2023年03月
敷地面積 9,080.99㎡
建築面積 2,072.42㎡
延床面積 7,496.92㎡
構造規模 S造 4階建て

本施設は市立図書館を中心とする複合公共施設と民間施設が共存し、「暮らしが花ひらく生活都市をより豊かに彩る拠点」となるものである。
熱負荷の低減とともに直射日光を遮蔽して快適な室内環境を確保するために、駅に面するファサードはアルミエキスパンドメタルのシェイドで覆い、イベントホール正面の正方形の開口を象徴的に挿入した。伝統的な竹細工の繊細さと符合させながら、日常的な施設のカジュアルさと洒落た気分を併せ待ち、これからの江南市に相応しい華やいだイメージを付与した。
公共施設と民間施設の良好な関係性と複合する公共施設の4つの機能をエントランスホールで合理的に結節させ、エントランスホールを介して、東駅前広場から民間施設や駐車場までの自由な往来を可能にした。また、4層の吹抜の中に上階への階段・エスカレータ・エレベータの縦動線を集約し、上層の図書館・保健センター・子育て支援センターの雰囲気がこの導入空間に溢れ出すようにした。


リブリオ行橋(行橋市図書館等複合施設)

所 在 地 福岡県行橋市大橋
竣工年月 2020年02月
敷地面積 3,182.07㎡
建築面積 2,151.19㎡
延床面積 5,143.46㎡
構造規模 SRC造 一部S造 4階建て

この施設は、市立図書館を基幹に市民の文化活動のための機能や子育て支援機能が付加された複合施設である。図書館の持つ集客力を活かして中心市街地ににぎわいを創出する起点となること、同時に「にぎわい」と「静けさ」という異なる性情を共存させることが求められた。
敷地はふたつの村の境界を流れる長峡川の右岸大橋川に位置し、旧百三十銀行と向かい合う木蝋商柏谷代々当主柏木勘八郎の屋敷跡という由緒をもつ。
4層からなる建物を下層と上層の量塊に分節し、ツイストさせた。下層は赤レンガ館と正対する。ふたつの敷地がもつ因縁を尊重すると同時に、背後にある旧大橋村の町割りと整合させて、市民を受け入れ、街に新たなにぎわいを創出するように仕掛けた。上層は長峡川と正対する。それは、上階から眺める対岸の旧行事村の街並みとも符号する。
ツイストする量塊は、不整形な土地形状への対応であると同時に、歴史的文脈の上に未来を積み上げる企図の表出でもある。


安城市図書情報館 アンフォーレ

所 在 地 愛知県安城市御幸本町
竣工年月 2017年06月
敷地面積 6,931.83㎡
建築面積 2,403.30㎡
延床面積 9,274.11㎡
構造規模 S造一部CFT柱、RC造 地下1階/地上5階建て

中心市街地ににぎわいを創り出し、商店街の活性化を図るために、公共施設と民間収益施設とイベント広場、駐車場の4つの施設の複合体として整備することが求められた。その回答として、メインストリートに面する北側に公共施設と広場を設け、施設と街が密接に関係づき、市街地への人の流れができるようにした。そして、南側に民間収益施設、中間に立体駐車場を配置し、東側の道路に沿ってそれら3つの建物を2階レベルで連結した。
中心となる公共施設は5階建てである。1階の交流施設とホール、2階から4階の図書館を中心とする機能、5階のヘッドクォーターで構成される。1階はまちに開かれ、街のにぎわいを吸収し、増幅させて街に開放する。上階に上がるにしたがって静寂になるように積層している。
かつて知多から三河かけての地域では田園の地下にある不透水層を掘り起こして煉瓦が製造された。土が隆起したような煉瓦の壁を立ち上げて場所の由緒を示すことにした。また、安城市は仙台・平塚と並ぶ七夕の名所である。ガラスのキューブを市松状に突出させることで七夕飾りとの符合を試みた。


益子 一彦

株式会社三上建築事務所

profile

1959 茨城県生まれ
1983 武蔵工業大学工学部建築学科卒
1983 三上建築事務所入所
2001 三上建築事務所副所長
2005 三上建築事務所所長

works

1998 下館市立図書館(現:筑西市立中央図書館)
2000 大洗町立南中学校
2004 結城市民情報センター
2006 潮来市立図書館
2007 稲敷市立桜川中学校
2009 東京理科大学大子研修センター
2010 茨城町立明光中学校
2011 生活協同組合 パルシステム茨城・みとセンター/筑西市立協和中学校
2012 大洗町幕末と明治の博物館・聖像殿/茨城県立水海道第一高等学校
2013 農後高田市立図書館/水戸市消防本部北消防署/堀川保育園
2014 茨城県立水戸第二高等学校普通・特別教室棟/石岡第一高校 管理・普通教室棟
2015 筑波技術大学春日地区/東西医学総合医療センター
2016 茨城県立常陸太田特別支援学校小中学部棟/矢祭町立矢祭小学校/水戸市医師会看護専門学院
2017 玉野市図書館/安城市図書情報館 アンフォーレ/学びの杜ののいちカレード
2018 下妻市立下妻中学校/武蔵野市立吉祥寺図書館
2019 鉾田市立鉾田南小学校/パルシステム栃木センター
2020 リブリオ行橋(行橋市図書館等複合施設)/砺波市立砺波図書館
2021 日立市立日高小学校
2022 水戸市下入野健康増進センター
2023 江南市布袋駅東複合公共施設/日立市立中里小中学校

books

1999 図書館・建築・開架・書架 -ライブラリーアイデンティティを求めて-
2011 図書館空間のデザイン
2018 続・図書館空間のデザイン
2020 三上建築事務所特集号『図書館建築から広がる世界』